他の道を選ぶ


子役はその後も芸能界を目指しますが、芸能界で続けられる人は本当に極僅かです。 多くの人が芸能界から離れます。私もその一人になりました。

子役を続けていた人も、いつか壁に打ち当たります。 子役時代は生活を考えなくてもいいかもしれません。

しかし大人になると 生活を考えなくてはいけない時がきます。その時に本当に芸能界を続けるのか考えるはずです。芸能界に入るのは難しくないのかもしれません。本当に難しいのは芸能界を続けることです。

私の周りの子役たちの多くも芸能界を諦めていきました。どこかで通用しない自分を悟のだと思います。また目指したい道が他に見つかり、その道に進んでいった子役もいます。理由は人それぞれ様々です。

そして私も芸能界を離れました。理由は色々あります。私は昔からスポーツの世界に憧れていました。なぜならスポーツの世界は白黒はっきりつく世界だからです。順位も明確です。

それに対して芸能界は得点もなく、白黒はっきりつきません。当時はそれがイヤでした。芝居に自信があったので、白黒つけたかったのだと思います。けれども今なら違う考えができます。

それは白黒つかない世界だからこそ、様々な受け止め方があるということです。人それぞれの感情で捉えられるのが演劇のよいところです。正解も間違いもありません。自分が好きな様に表現できる世界だと分かった時、演劇が好きになりました。

また当時は事務所の力関係や外見ばかりにこだわる世界がイヤでした。いくらオーディションで頑張っても事務所の力で配役が決められたり、また外見だけで主役が選ばれたりします。そこには芝居の上手さは関係ありませんでした。実力で勝負したい自分にとって、必ずしも実力だけではない芸能界に魅力を感じなくなっていました。

その他に大物役者さんでも自分が前に出ることばかり考えている人がいました。相手の演技をいかに潰し自分が目立つかだけを考えていました。私は作品を共演者や制作スタッフとのチームプレーで捉えていました。みなで気持ちを通わせて良い作品にしたいと思っていました。けれども大物の方でも自分ばかり目立とうとする姿勢に幻滅してしまいました。

私は芝居を仕事として考えておりませんでした。純粋に楽しみたいと思って取り組み、たまたまオーディションに受かり、演じていただけでした。けれども役者を仕事として考えた時、自分はこの世界を純粋に楽しんで演じることはできないと思いました。

事務所や人とのしがらみ、芝居以外での気疲れを強いられます。本当に純粋に演劇を楽しみ、仕事として生活するのは難しいと考えました。また普通に就職することにも興味があったので、普通の社会人になることを学生時代に決めました。

この判断に関して、全く後悔はありません。寧ろ良い辞め時だったと思います。学生時代の純粋に芝居を楽しめた時に辞められたのです。このように芝居を楽しめるのは学生の時しかできませんでした。

そういう意味でも学生時代に演劇を選んでいて良かったです。学生時代に演劇をしていなければ、大人になり演劇を目指していたかもしれません。そうしたらさらに時間がかかることでしょう。このタイミングで辞めて良かったと思ってます。

子役を経験したけれども、他の世界にいくのは十分ありだと思います。そして子役での経験は他の世界でもいかせられます。私は他の道を選ぶ子役に大きな応援を送ります。

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